〇カルシウムの基本情報

カルシウム」はリン酸と結合したリン酸カルシウム(ハイドロキシアパタイト)として骨や歯といった硬組織に存在し、その比率はおよそ99%です。残りの1%が筋肉や血液、神経といった軟組織に存在しています。

身体全体で見ると、体重の1~2%が含まれており、体重60kgの方ならおよそ1.2kg程で、カリウムやナトリウム同様体内に多く存在しているミネラルの一種です。

カルシウムは主に小腸で吸収され、細胞や血液中のカルシウム濃度は甲状腺ホルモンや副甲状腺ホルモンの関与によって常に一定に保たれてはいますが、その吸収率は健常な成人男性でも30%程とあまり高くありません。

カルシウムは吸収率が低い栄養素の一つとして数えられており、カルシウムの含有量が多い牛乳であっても、その吸収率は約40%、煮干しなどの小魚で約30%、野菜に至っては約20%とかなり低くなってしまいます。

余談ではありますが、鉄分が豊富な野菜で有名なほうれん草などの青菜類にはカルシウムの吸収を阻害する栄養素「シュウ酸」が含まれるためにカルシウムの吸収率は低くなりますが、青汁などの原料でも有名なケールにはシュウ酸が含まれていないため効率よくカルシウムを吸収することが可能です。

食材によってカルシウムの吸収率に違いが出る理由として、「たんぱく質」や「乳糖」との関係が知られており、牛乳のカルシウムの吸収率が他の食材に比べて頭一つ抜けているのはこれらの栄養素も一緒に含まれているからでしょう。

その他にも、ビタミンD、難消化性オリゴ糖などがカルシウムの吸収率を上げてくれる栄養素として挙げられます。

逆にカルシウムの吸収率を阻害する栄養素として、先ほど紹介したシュウ酸、脂質、リン、カフェイン、さらにはたんぱく質を大量に摂取するのも逆効果です。

〇カルシウムの欠乏症のリスク

我々日本人の食生活では、全世代でカルシウムが不足していると言えます。厚生労働省が定める1日当たりのカルシウムの推奨摂取量は18歳以上の男性で800mg、女性でも650gとなっていますが、実際の平均摂取量は男性で520mg、女性で509mgと推奨量を大きく下回っています。(参考:厚生労働省「国民健康・栄養調査(2019年)」

カルシウムが不足すれば、カルシウムが構成するもの、つまり歯や骨が脆く、弱くなってしまいます。

幼児では発育障害、成人では骨密度の上昇が妨げられ、高齢期には骨粗鬆症のリスクが格段に高まります。

また、筋肉や神経にも関与することから、筋肉の痙攣やてんかん発作の原因にもなります。

〇カルシウムの過剰症

厚生労働省が定めるカルシウムの耐容上限量は18歳以上の男女共に2,500mgとなっていますが、基本的には我々日本人の食生活ではカルシウムの過剰症はあまり起こり得ないとされています。

欧米諸国などに比べてチーズやヨーグルトの消費量が少ないこともその理由の一つではありますが、普段から乳製品などを多く摂取すのに加えて栄養補助食品などのサプリメント類からカルシウムを多く摂取する方に限っては注意が必要ですね。

高カルシウム血症、高カルシウム尿症、軟組織の石灰化、泌尿器系結石、前立腺がん、鉄や亜鉛の吸収障害、便秘などの様々な健康障害が起こります。

〇おわりに

今回は骨や歯などの硬組織の構成に欠かすことの出来ない「カルシウム」についてご紹介しました。

全ての世代で不足していると言われるカルシウムですが、ただやみくもにカルシウムを摂取しても意味がありません。

栄養素の特徴を正しく理解し、効率よく摂取することが健康への近道かもしれませんね。