〇鉄の基本情報

」とは必須ミネラルの一つで微量ミネラルに分類され、赤血球のヘモグロビンの構成成分として全身に酸素を運搬する働きを持つ必要不可欠なミネラルです。

食品中に含まれる鉄は、肉や魚などの動物性食品に多く含まれている「ヘム鉄」、植物性食品に多く含まれるヘム鉄以外の「非ヘム鉄(無機鉄)」とがあります。

両者とも同じ鉄分には違いありませんが、吸収のされ方に違いが見られます。

小腸で吸収される鉄ですが、身体に酸素を運搬するという重大な役割を担っている割には吸収率が平均で8%と非常に低く、非ヘム鉄では約5%とさらに低くなります。その点、動物性食品に含まれるようなヘム鉄の場合は吸収率が約20%程度と非ヘム鉄と比べると吸収率が約4倍ほどあるのが分かります。

ヘム鉄はたんぱく質と結合している還元型であるため、十二指腸の上部(最初の方)で形を維持したまま吸収されますが、非ヘム鉄の場合は還元型ではないため一度還元型に形を変形、その後吸収されます。吸収された鉄分は酸化され、再度たんぱく質と結合し、血液によって身体の隅々まで運ばれます。

しかし、吸収率だけを見てヘム鉄ばかりを摂取するのはナンセンスです。

非ヘム鉄は体内での必要量によって吸収量が変化するという特徴を持っており、特に女性の妊娠期にはこの非ヘム鉄の必要摂取量が増加します。

上記のような酸素を運ぶ役割を担う鉄分を「機能鉄」と言いますが、この機能鉄が不足してしまった時のために体内に蓄えられているのが「貯蔵鉄」です。およそ65%の機能鉄が血液中のヘモグロビンの構成成分となりますが、残りの20~30%は肝臓や骨髄などにフェリチンやヘモシデリンとして貯蔵鉄が蓄えられているのです。

小腸で吸収される鉄ですが、身体に酸素を運搬するという重大な役割を担っている割には吸収率が平均で8%と非常に低く、普段から意識していないと不足しやすいミネラルです。

〇鉄の欠乏症のリスク

先ほども少し紹介しましたが、妊娠期の女性は鉄の必要量がグンと増加します。成長期の子どもや月経周期の方、特定の疾患により出血が多くみられる場合などにも鉄は不足します。

さらに、食品からの鉄の摂取が長期間に渡って出来ない時にも鉄不足は起こります。

鉄の不足による主な症状としては、「貧血」が最も有名でしょう。

貧血のおよそ90%は鉄の不足が原因で起こりますが、その詳細は血液中のヘモグロビン(血色素)が不足することにより全身に上手く酸素が運搬できなくなり、頭痛やめまい、動悸などを引き起こします。

このような貧血の症状が出るということは、酸素を運搬する機能鉄だけでなく機能鉄のバックアップでもある貯蔵鉄までもが不足している状態です。

つまり、貧血の症状が出た状態の時には体内の鉄分が完全に枯渇している状態なので、それだけで非常に危険な状態と言えるでしょう。

また、鉄の不足は集中力の低下、イライラしやすくなるといった精神面への影響も大きい栄養素です。

〇鉄の過剰症

鉄の過剰症は普通に食事を摂る分にはほとんど心配はいらないでしょう。

鉄の吸収率が極めて低いこと、必要以上に吸収されないという特徴を持つため、しっかり意識して摂取したい栄養素です。

しかし、体質・遺伝的に鉄が体内に蓄積しやすい方やサプリメントなどからの摂取量が多い方は注意が必要です。

長期間の過剰な摂取は肝臓障害や胃腸障害、不整脈のリスクを高めます。

〇おわりに

今回は必須ミネラルの一つ、「」についてご紹介しました。

吸収率が低いという特徴から世界的に見ても不足しがちな栄養素ですが、しっかり摂取出来れば全身への酸素の供給量も上がり、それだけで代謝が上がる栄養素です。

ビタミンCやクエン酸と同時に摂取することで吸収率が高まりますので、普段の食事にフルーツなどを追加されてみてもいいですね。