〇ビタミンB₁の基本情報

ビタミンB₁は水溶性ビタミンのビタミンB群の一つであり、数あるビタミンの中で一番最初に発見されたビタミンになります。

炭水化物(主に糖質)の代謝を促し、エネルギーの代謝を助ける働きがあるため、糖質からエネルギーを得ている、つまり白米をよく食べる我々日本人には欠かせないビタミンであるほか、パンや麺類を食べる方々にも同じことが言えますので、どなたにも必要ばビタミンと言えるでしょう。

ビタミンB₁はチアミンと呼ばれる化合物であり、チアミンにリン酸が一つ結合したチアミンモノリン酸(TMP)、二つ結合したチアミンジリン酸(TDP)、三つ結合したチアミントリリン酸(TTP)がありますが、それらの化合物すべては消化管でビタミンB1に消化された後、吸収されるため、ビタミンB1とほとんど同じ働き、効果があります。

ビタミンB₁は主に穀物の胚芽(玄米など)に豊富に含まれていますが、お米なら精米の段階で多くのビタミンB₁が失われてしまいます。精米時時に米ぬかに多くビタミンB₁が含まれますが、現代では米ぬかはほとんど使われなくなってしまいました。お米の精米度が高ければ高いほどビタミンB₁の含有量は低くなるため、注意が必要です。

また、ビタミンB1は水道水に含まれる塩素によっても減少するため、米はとぎすぎないように注意する必要があります。

はるか昔、江戸時代の庶民はビタミンB₁の欠乏症になることはほとんどありませんでしたが、お城に住む殿様やその周りの人間だけがビタミンB₁不足になってしまうのは、上記のようなビタミンB₁の特性があるからでしょう。

〇ビタミンB₁が不足するとどうなるの?

ビタミンB₁が不足すると、初期の症状としては食欲不振や身体のだるさ、イライラや集中力が持続しにくいなどの症状が現れます。

しかし、慢性的なビタミンB₁の不足は時として重篤な状態を招きかねません。

脳はブドウ糖をエネルギー源としていますが、ビタミンB1が不足するとエネルギーが不足し、脳や神経に障害を起こします。重症な場合は脚気(足の浮腫、しびれ、動悸・息切れ)や※ウェルニッケ・コルサコフ症候群(中枢神経が侵される障害)になり、重篤な場合は死亡することもあります。

冒頭でも少し触れましたが、江戸時代には城に住む上流階級の人間ほど精米されたお米をよく食べていたため、脚気などの症状にかかりやすかったと言われています。江戸時代後期になれば精米されたお米が広く流通するようになり、脚気などの病は一気に広まりました。当時流行ってしまった脚気を「江戸患い」と呼びます。

現代であれば、インスタント食品ばかりを食べるような人にビタミンB₁ぼ欠乏症が見られます。

※眼球の運動麻痺、意識障害などが特徴で、進行すると昏睡に陥ります。また、重症になるとコルサコフ症という精神病になることもあります。アルコールの摂取量が多い人に起こりやすいといわれ、アルコール依存症との関係が研究されています。

〇ビタミンB₁を摂り過ぎるとどうなるの?

ビタミンB₁は水溶性ビタミンであるため、過剰症についてはほとんど報告がされていません。

毎日の排せつだけでなく、ビタミンB₁は汗からも流れ出てしまいますので、毎日の食事・サプリメントなどを使って意識的に摂取されると良いでしょう。

〇おわりに

今回は水溶性ビタミンであるビタミンB₁についてご紹介しました。

糖質の働きを助けてくれるこのビタミンですが、欧米諸国に比べて白米などの糖質が普段の食事のメインになる我々日本人には欠かすことの出来ない重要なビタミンです。

欠乏症は時には重篤化を招きますので、普段からバランスのとれた食事を心がけて下さいね。