三大栄養素の一つである脂質について、その中でも摂取したい脂質であるn系の脂肪酸を中心に紹介したいと思います。

脂質とは

脂質とは1gで9㎉というエネルギーをもつ、まさにエネルギーの塊です。人類の歴史は飢餓の歴史ともいえますが、今でも私たちが生存できているのは、何度も訪れたであろう飢餓に適応することができたから他なりません。
その中に一つの機能として、私たちは体脂肪という形でエネルギーを貯えることが出来たからです。
脂質はグリセリンと脂肪酸で構成されています。三大栄養素の一つですし、エネルギーの塊なのですから、重要な栄養素であることは間違いありません。実際、ホルモンや細胞も脂質が必要となります。
問題は現代の飽食の時代において、日常的な食事が脂質過多になっているという点です。従って健康のためにも脂質を抑えようという発想になりますし、減量の際により多くの脂質を抑えることが効果的なカロリー抑制につながります。
しかし極端な脂質カットを長期にわたって続けると様々なマイナスな症状が現れます。細胞も赤血球も脂質が必要ですから、それぞれの生産や代謝がスムースに行われなくなってくるのです。

脂肪酸とは

 脂肪酸は脂質をつくっている成分です。脂肪酸は、その科学的構造から二重結合の数によって大きく3つに分類でき、二重結合がない飽和脂肪酸、二重結合がひとつの一価不飽和脂肪酸、二重結合を2つ以上含む多価不飽和脂肪酸に分けられます。さらに、この多価不飽和脂肪酸には、二重結合の位置によってn-6系多価不飽和脂肪酸(以下はn-6系脂肪酸)やn-3系多価不飽和脂肪酸(以下はn-3系脂肪酸)があります。これらの脂肪酸は食品にそれぞれ異なった割合で含まれていて、それぞれ体の中での働きが異なります。

脂肪酸の効能

■ 飽和脂肪酸

 乳製品、肉などの動物性脂肪や、ココナッツ油、やし油など熱帯植物の油脂に多く含まれています。重要なエネルギー源であるとともに、飽和脂肪酸の摂取量が少なすぎても多すぎても生活習慣病のリスクを高くします。少なすぎると脳出血をおこす可能性があります。一方、多すぎると冠動脈疾患(心臓を養っている血管の病気)、肥満、糖尿病をまねく可能性があります。このため、適度な量の乳製品や肉類を食べることは、両方の場合の生活習慣病を予防することになります。

■ 多価不飽和脂肪酸

 主に植物油や魚に多く含まれ、体の中で合成できないため食べ物からとらなければならない必須脂肪酸もこのなかまです。数個の二重結合を持つことから酸化されやすいため、これを含む油脂は劣化しやすいという特徴があります。
日本人が摂取するn-6系脂肪酸のほとんどはリノール酸です。リノール酸は必須脂肪酸です。しかし、とり過ぎはアレルギーなどの炎症と関係することから、適度な摂取が大切です。リノール酸は、大豆油、コーン油、サフラワー油などに多く含まれています。
n-3系脂肪酸には、調理油などに含まれている必須脂肪酸のα(アルファ)-リノレン酸、魚類に多く含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)などがあります。n-3系脂肪酸は不足すると皮膚炎などを生じます。一方、n-3系脂肪酸には生活習慣病の予防に役立つ様々な働きとして、血中の中性脂肪を下げたり、不整脈を予防したり、血液をさらさらにして動脈硬化を防いだりすることなどがわかってきています。

終わりに

健康の維持・増進のためには、様々な働きをするこれらの脂肪酸をバランスよくとりたいです。そのためには、まずは脂質の摂取量全体を適切な量になるよう配慮し、油料理をする際は植物油にするなどして、肉や乳製品からの動物性脂質ばかりに偏らないようにすることが大切です。