そもそも貧血とは何なのか?
「血が貧しい」と書いて貧血と読むことから、多くの方が「血の量が少なくなること」が貧血であると思いがちですが、実はそうではありません。血液の量自体は正常な方と貧血の方ではあまり差はなく、血液中の「赤血球」の量と質が低下している状態を貧血と呼びます。
この状態になると、普段なら何ともないような階段を昇るだけでも動悸や息切れがしたり、他には疲れやすくなったり頭が痛くなる、顔色が悪くなどの症状が表れます。
自身が貧血であるかを確認するには特定の医療機関にて検査を受ける必要がありますが、ヘモグロビンの値が成人男性で「13g/dL未満」、成人女性で「12g/dL未満」、80歳以上の場合は「11g/dL未満」で貧血と診断されます。
現在日本では女性の10人に1人、月経中の女性に関しては5人に1人が貧血気味であるとされており、貧血がもたらすデメリットはもはや軽視できない問題となっています。
鉄不足が原因となる「鉄欠乏性貧血」とは?
皆さんが経験する多くの貧血が、鉄分不足が原因として起こる「鉄欠乏性貧血」です。正常な赤血球に比べて、鉄欠乏貧血の赤血球は色が薄く、小さい赤血球や形の悪い赤血球などが見られるという特徴がありますが、その背景には「ヘモグロビン」という物質が影響しています。
ヘモグロビンは赤血球が酸素を取り込む際に働く物質ですが、そのヘモグロビンを作るには鉄が欠かせません。ヘモグロビンが正しく作られなければ、赤血球は酸素を取り込むことができなくなるだけでなく、正しい赤血球を作ることができなくなり、最終的には全身に酸素を供給することが難しくなります。これが、鉄欠乏性貧血です。
鉄欠乏性貧血の症状とは?
どの貧血の症状にも共通して言えるのが「酸素不足」による影響ですが、冒頭でも紹介したような「動悸」「息切れ」「疲れやすい」「頭が痛くなる」「顔色が悪くなる」などが主な症状となります。
しかし、鉄欠乏性貧血になると上記のような症状に併せて以下のような症状が出ます。
- 爪の変形
「さじ状爪(スプーンネイル)」とも呼ばれ、爪の中央がへこみ、先が反り返ってスプーン状になる。貧血によって薄くなった爪が、外から加わった圧力に耐え切れずに反り返ってしまう状態です。爪が弱くなっていることから、爪の先端が薄くはがれる「二枚爪」といった症状が出ることもあります。 - むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)
「下肢静止不能症候群」とも呼ばれ、主に下肢に不快な症状を感じる病気です。夜間、寝る時などに脚がむず痒く感じ、なかなか寝付けないなどといった症状があります。 - 氷食症
こちらは非常に稀ではありますが、「氷が食べたくて仕方ない」という症状が出る方もおられます。
「かくれ貧血」にも要注意!
正式名称を「潜在性鉄欠乏」といい、いわゆる貧血予備軍の状態です。難しそうな名前はあるものの病気という訳ではなく、案外軽視されがちではありますが、この状態を長い期間ほうっておくとやがて鉄剤などを服用しないと改善しないような貧血になってしまう可能性が非常に高まります。
普段ヘモグロビンに使用される鉄が一見正常値に見えても、「貯蔵鉄」と呼ばれるいざという時に鉄が不足しないように体内で備蓄している鉄が不足した状態のこと言います。成長期のお子さんや月経のある女性で多く見られるため、普段から意識的に鉄を摂取するのが好ましいでしょう。