〇セレンの基本情報

セレン」とは、我々人間にとっての必須ミネラルの一つであり、体内のサビつきの原因ともなる活性酸素から身体を守る抗酸化作用のためのたんぱく質や酵素を構成する役割を担います。

セレンは,主に肝臓や腎臓に存在し、成人の場合でおよそ10~15mgが体内に存在しています。多価不飽和脂肪酸から生成される「ヒドロペルオキシド」を代謝する酵素である「グルタチオンペルオキシダーゼ」の一部であり、甲状腺ホルモンを脱ヨウ素化する酵素の一部でもあります。

一般にビタミンEや亜鉛と一緒に摂取することで抗酸化の効果を高めることが可能です。

魚介類や肉類、卵、乳類、穀類などに多く含まれますが、食品中のセレンの含有量は土壌中のセレン濃度によって左右されます。「どの食品にどのくらい」というような正確な情報はあまり多くなく、上記の食品中に多いということだけが分かっています。

上記の食品に共通することが「たんぱく質が豊富な食品」ということから、食品中のセレンはたんぱく質結びついて同時に吸収されるということが分かっています。その吸収率は50%と非常に高く、普段の食事で不足することはあまりありません。

また、セレンを含んだ塵埃(チリやホコリ)が呼吸によって体内に取り込まれ、中毒症を起す場合があるため、取り扱う産業現場などでは注意が必要とされています。

〇セレンの欠乏症のリスク

実はセレンがどのような経緯で吸収され、体内で作用するのかについてはまだはっきりと解明されていませんが、ここではセレンの欠乏症として有名な事例として「カシン・ベック症」をご紹介します。

カシンベック症とは、低セレン地域である中国北部やシベリアの一部で子供に多く発症する病気で、O脚、X脚、自然骨折などの症状が見られます。この地方の穀物に含まれるミネラル不足、飲料中の鉄塩、菌類 (キノコ・カビ)などが原因とされています。

〇セレンの過剰症

セレンの耐容上限量(日常的に摂取し続けた場合に健康障害のリスクがないと考えられる上限の量)には個人差がありますが、およそ300㎍とされています。

他のミネラル類と比べて毒性が非常に高いにも関わらず、必要量と中毒となる量の範囲値が近いため摂取には注意が必要です。

長期間の過剰摂取は時に胃腸障害や神経障害、心筋梗塞や急性腎不全の原因ともなるので、注意してください。

妊娠期の女性も同様であり、過剰摂取が原因で催奇形性や流産のリスクを高めます。

よほどの偏食でもない限り、肉や魚を中心におよそ100㎍(摂取目安量)の摂取が出来ているとされるため、特にサプリメントなどで補う必要はありません。

〇おわりに

今回は必須ミネラルの一つである「セレン」についてご紹介しました。

欠乏症よりも過剰症のリスクが怖い栄養素ではありますが、特段サプリメントなどを服用して過剰に摂取しない限りは不足も過剰の心配もいりません。

普段からバランスの取れた食事を意識して健康に取り組みましょう。