〇ナイアシンの基本情報

ナイアシンは水溶性ビタミンであり体内に最も多く存在し、体内の至る所で働きます。名前こそ「ビタミン〇〇」ではありませんがビタミンB群の一つであり、「ニコチン酸」「ニコチンアミド」の総称です。皮膚や粘膜を正常に保つほか、脳神経を正常に働かせる役割を担います。

ナイアシンは人間のほとんどの細胞で「補酵素」としての役割を果たしており、全ての酵素の2割は活性化の時にナイアシンを使っています。

食品中から摂取した糖質や脂質を代謝してエネルギーに変えるのに必要なナイアシンですが、生鮮食品中では、主にピリジンヌクレオチド(NAD、NADP)の形で含まれますが、食品を調理・加工する際に分解されて動物性食品ではニコチンアミド、植物性食品ではニコチン酸に変わります。

生野菜や刺身など火を通したりなど調理・加工がなされていない場合は、ピリジンヌクレオチドは消化管内で分解されてニコチンアミドになります。

食品により分解率や吸収率が変わってきますが、日本で一般的に食べられている食事中のナイアシンの利用効率は約60%と推定されています。

上記のような食品中からナイアシンを摂取するほか、肝臓内でトリプトファンというアミノ酸の一種からも生成することが可能ですが、その時にビタミンB₁・ビタミンB₂・ビタミンB₆が必要になります。どれか一つでも不足していると、体内でナイアシンを十分量生産することは出来ません。

また、ビタミンCやビタミンEなどの「抗酸化作用ビタミン」が働く際にもナイアシンが関わっています。

〇ナイアシンが不足するとどうなるの?

ナイアシンの働きが皮膚や粘膜、神経系を正常に保つということから、不足すればそれらに異常が見られるようになるでしょう。

また、倦怠感や食欲不振などの症状もエネルギー不足により引き起こされます。

特に注意が必要なのがナイアシンの欠乏症がきっかけで起こる「ペラグラ」と呼ばれる皮膚の病気であり、手足や顔、首に皮膚炎が起こります。

さらに下痢や頭痛なども起こり、進行していくと脳の機能に障害が起こってしまいます。

基本的には食品中からトリプトファンを摂取することが難しい中南米の地域の人に多く発症しますが、その要因として主食のトウモロコシに含まれるトリプトファンの含有量の少なさが考えられます。

現代の日本でナイアシン欠乏症になることはほとんどありませんが、不規則な食事の多い方、アルコールの摂取量が多い方はその限りではありません。

しかし、早期に治療を行えば危険はありません。

〇ナイアシンを摂り過ぎるとどうなるの?

サプリメントで大量に摂取することでもない限り、普段の食事からナイアシンを摂り過ぎることはほとんどないと考えて良いでしょう。

仮に大量に摂取してしまったとしても、皮膚が炎症を起こすなどして痒みがでたり少しヒリヒリする程度です。健康上はそこまで問題はないとされていますが、大量摂取が長期間続いて症状が悪化すれば、下痢や嘔吐、肝機能の低下や劇症肝炎などの肝臓障害になるリスクが高まりますので注意してください。

〇おわりに

今回は水溶性ビタミンでビタミンB群の一つである「ナイアシン」についてご紹介しました。

本文中で皮膚や粘膜、神経系の働きがあるという風に説明しましたが、ナイアシンはアルコールの分解作用もあることから「二日酔い」にも効果が期待できます。お酒を飲む前と飲んでいるとき、飲んだ翌日にナイアシンを多く含む食品を摂取することで頭痛などの二日酔いの症状を和らげることが出来るでしょう。

とは言うものの、二日酔いになるまでお酒を飲むことは健康上あまり良いことではありませんので、量にはくれぐれもご注意下さいね。