加齢に伴う体力の低下、即ち筋量と筋力の低下が危ぶまれている昨今の高齢者問題ですが、それらの多くはほんの少しの意識で改善・予防が出来るのです。

年齢を重ねると低下するのは体力だけでなく食事の量も落ちる傾向があり、これらは密接に関係しています。食事を摂らなくなると、体力が落ち日中の活動量が減り、活動量が減ると消費するカロリーが少なくなるのでお腹が空きにくくなるのです。これでは負の連鎖ですよね。

では、上記のような状態を予防するには、または脱却するにはどうしたらいいのでしょうか?

高齢化(ここでは65歳以上の男女を指します)が比較的健康で元気な身体を維持しようと思うと、「エネルギー(カロリー)」と「たんぱく質」を意識した食事を心がけると良いでしょう。もちろん、その他の栄養素である糖質や脂質、これらの栄養素を効率よく吸収するためのビタミン・ミネラルもバランスよく摂る必要がありますが、先ずはエネルギーとたんぱく質をメインに考えてみて下さい。

エネルギー不足になるとどうなるの?

長期的なエネルギー不足は、慢性的な栄養不足、つまり「低栄養」状態を招きます。低栄養になると(正しくは低栄養になる段階で)、身体に様々な支障をきたすようになり、冒頭でも説明した負の連鎖を助長してしまうことになります。

低栄養になってしまう理由

こちらも冒頭で少し触れましたが、人間は加齢と共に体力・食欲が衰えていきます。

これは、加齢によって身体の様々な機能が衰えることに発端を期す訳ですが、食べ物を噛んだり飲んだりする力であったり、食物を消化・吸収する機能が衰えることにより、食事から栄養素を体内に摂り入れることが難しくなるのです。

低栄養の症状にはどんなものがあるの?

ここでは、高齢者の「低栄養」に関する具体的な症状をご紹介します。

筋量・筋力が減る

たんぱく質の摂取量が減ると、身体を占める筋肉の割合が減少します。これらは短期間で一気に減少するものでもありませんが、筋肉の成長・形成に必要なたんぱく質が体内で吸収されなくなると、人間の身体は現在ある筋肉を分解してたんぱく質を得ようとする働きがあります。これを「カタボリック」と言いますが、たんぱく質という栄養素は筋肉の形成形成だけでなく、髪の毛や肌、臓器など様々な部分の形成に使われるため、優先順位の低い筋肉は分解されてしまうのです。

また、筋量・筋力の低下は運動能力の低下を招き、転倒などの怪我のリスクを高めます。さらに免疫力の低下にも繋がるため、怪我や病気をした時の回復スピードにも影響が出るでしょう。

認知症のリスクが高まる

ビタミンやたんぱく質が慢性的に不足することで認知症のリスクが高まることは有名ですが、中でもたんぱく質に含まれる「アルブミン」が不足することで認知機能が低下することが新たに分かっています。

加えて、活動量が減ることにより脳に新しく入る刺激が少なくなることも、認知症のリスクを高める原因の一つとされるため、同時に予防したいところです。

低栄養にならないために

自分が低栄養にならないためにも、自分の身体を知ることは大事なことです。

その一つに「体重」があります。

日頃から体重を計ることで、健康のバロメーターとして活用しましょう。

過度な肥満などは該当しませんが、痩せ型や普段の食事の量が少ない方は、急激な体重の減少時には注意が必要です。半年以内に体重の減少率が3%以上、または2~3kg落ちるような場合には一度食事を見直してみましょう。

減少率が5%を超えるような場合は非常に危険ですので、お近くの病院で一度ご相談されてください。

おわりに

今回は「低栄養」と「たんぱく質」についてご紹介しました。

「あなたの身体はあなたが食べているもので出来ている」とはよく言ったもので、本当にその通りです。

今日食べたものが明日効果を現すものでもないので、日頃の意識がとても大切になります。