今年は新型コロナウイルスの感染が猛威を振るっているせいか、インフルエンザの発症者数は例年に比べて激減していると言えるでしょう。しかし、気温がグッと下がり空気の乾燥が進むこれから時期は、マスクや消毒だけに頼りっぱなしになるのも危険です。皆さんはインフルエンザの感染予防対策の1つとして、「口腔ケア」が重要視されているのをご存知でしょうか?

口腔内細菌がインフルエンザの手助けをする?

口の中を清潔に保つことは、よもやインフルエンザだけに限らず多くの細菌・ウイルスから皆さんの身体を守ることに直結すると言っても過言ではありません。と言うのも、イルスというのは基本的には自らの力で増殖することはできず、生きた細胞に入り込むことで増殖を可能とします。誰もが少なからず保持しているとされている「歯周病菌」が出すタンパク質分解酵素である「プロテアーゼ」は、ウイルスが細胞に引っ付くのに必要な表面タンパク質を細胞に吸着しやすくするなど、インフルエンザウイルスが我々人間の気道の上皮細胞へ吸着・侵入する手助けをするのです。

つまり、口の中が不衛生だと、口の中の細菌がインフルエンザなどのウイルスを細胞に取り込みやすくし、さらには活性化させてしまうという訳です。

正しい口腔ケアで劇的に発症率を抑える!

インフルエンザの感染予防に口腔内のケアが重要である旨は既にご紹介しましたが、口腔ケアには大きく分けて2つの種類があるのをご存知でしょうか?

セルフケア

これは自宅などで皆さんが普段から行っている普通の歯磨きです。学生の頃やテレビなどで正しい歯磨きの方法を習った、もしくは知っている人もおられるかもしれませんが、大抵の場合が「正しく磨けていない」状態の方が多いようです。

セルフケアを行う場合は、食後に丁寧なブラッシングを行うだけでなく、デンタルフロスや歯間ブラシなどを用いて食べカスをしっかり取り除くようにしましょう。そうすることで、細菌などの繁殖をより効率的に抑えることが可能です。

プロフェッショナルケア

自宅で行うセルフケアに対して、こちらは歯科医院などで行う口腔内ケアを指します。通常のブラッシングだけでなく、歯石の除去など自分ではできない専門的なケアを受けることができ、定期的に行うことで口腔内をより清潔に保つことができるでしょう。

また、ある調査では歯科医院で受ける口腔内ケアは自宅で行うセルフケアと比較して、インフルエンザの発症率を約10分の1にまで減らすことが可能であるという報告も存在します。

セルフケアの際は舌もキレイにしよう!

歯磨きと聞くとただ単に「歯だけを磨く」と想像しがちですが、大事なのは「口腔内のケア」です。日ごろからマメに歯磨きをしている方でも、舌の掃除となると見落としがちな方が多いようです。

是非とも歯磨きの前に、自身の舌を鏡で確認して頂きたいのですが、舌の表面に付いている白っぽい苔のようなものが「舌苔(ぜったい)」と呼ばれるものです。細菌や口腔内の細胞、さらには食べカスなどが集まってできたものであり、これが口臭の原因にもなっています。この舌苔をキレイに取り除くことも、インフルエンザの感染予防を行う上では非常に大切となります。

こちらの舌苔の除去に関しては毎食後行う必要はなく、1日1回起床後に行うのがオススメです。歯磨きの後に専用の舌ブラシを用いて舌の奥から手前に、粘膜を傷つけないように優しく掃除してください。ブラシがない場合は、タオルを指に巻き付けて拭くだけでも大丈夫です。

おわりに

今回は、インフルエンザの感染予防対策の1つとして、「歯磨き」に関する情報をご紹介しました。インフルエンザワクチンは感染後の重症化を防ぐためのものであり、感染自体を防ぐものではありません。「私はワクチンを受けているから大丈夫」と慢心せず、日々の生活の中でできる感染予防をきっちりと行うことが大切であると言えるでしょう。