〇銅の基本情報

」とは、生体内におよそ80mg存在している微量必須ミネラルの一つであり、主に骨や骨格筋、血液中に、1割程度が肝臓の中に存在しています。

体内に摂取された銅のほとんどが小腸や十二指腸で吸収され、その後肝臓に運搬されてたんぱく質と結合、セルロプラスミンという形で全身に運ばれた後、鉄の代謝、エネルギー代謝、活性酸素の除去など様々な代謝に関わっています。

また、鉄と共に造血機能にも深く関わっており、上記のセルロプラスミンは造血に関わるヘモグロビンの合成に必須の酵素であり、貧血予防に欠かせないミネラルです。

銅の吸収率はおよそ44%~67%と大きく変わりますが、銅には摂取量が少なければ少ないほど吸収率が高く、摂取量が増えるにつれて吸収率が低下するという特徴があります。吸収されなかった銅はほとんどが胆汁とともに小腸に分泌され、便とともに体外に排出されます。

銅がもたらすメリットは貧血予防だけではありません。

銅はマクロファージなどの免疫を司る細胞のエネルギー生産に関わるチトクロムCオキシダーゼと呼ばれる酵素の構成成分であるため、免疫力を高める効果があります。

さらに、血液中の銅は赤血球の中にも存在します。赤血球中の銅はSOD酵素(スーパーオキシドディスムターゼ)にも含まれており、動脈硬化を予防する役割も担います。SOD 酵素とは、活性酸素を除去する酵素です。

〇銅の欠乏症のリスク

銅は様々な食品に含まれているため、よほどの偏食でもない限り銅が不足する心配はないと考えられていますが、意図的に食事を制限しているような状況下では摂取量不足による欠乏症が考えられます。

例えば、銅の含有量が少ない人工ミルクを主な栄養源としている乳児や未熟児、消化管の手術により長期に経腸栄養での栄養管理がされている患者、などが挙げられます。

具体的な症状として、貧血、毛髪の色素が薄くなる(毛髪異常)、骨が脆くなる(骨異常)、白血球減少、神経系や心血管系の異常、知能低下や中枢神経障害など様々な疾患リスクが高まります。

その他には遺伝的に生まれつき銅の吸収が上手く行えないがために銅が不足してしまう「メンケス症候群」という銅の欠乏症があります。この病気の特徴は、毛髪が縮れる、骨や血管が脆くなる、などといったものがあります。

〇銅の過剰症

銅は過剰に摂取しても排出されるほか、ミネラルの中でも極めて毒性が低い種類なので過剰症の心配はほとんどありません。

欠乏症の項でも触れましたが、遺伝的に銅の排出が上手く出来ないことが原因で体内に銅が蓄積するウィルソン病という過剰症があります。

ウィルソン病は銅が胆汁中に分泌されず肝臓などに蓄積される遺伝病で、脳神経障害、重度の肝障害、関節障害などを起こします。

〇おわりに

今回は必須ミネラルの一つである「」についてご紹介しました。

鉄と共に造血や貧血を予防する働きなどがあるほか、免疫力を高めてくれたり動脈硬化を予防する働きなど多くの役割を担っています。

不足することがほとんどない栄養素ですが、だからといって疎かにせず普段の食事から意識されると良いでしょう。